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導入事例

生成AI分野での先端技術を活かし、 技術シーズと市場ニーズをつなぐ AIプラットフォーム「Bibbidi」を開発

産業技術総合研究所グループ

事業内容|鉱工業の科学技術に関する研究 及び開発等

【取材にご協力いただいた方】
産業技術総合研究所グループ

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) 情報・人間工学領域 連携推進室長 佐藤 稔久 様
株式会社 AIST Solutions(AISol) デジタルプラットフォームチーム担当部長 宮下 東久 様
株式会社 AIST Solutions(AISol) デジタルプラットフォームチームプランナ 門井 悠 様
ストックマーク株式会社 PaaS グループ 用途開発チームリーダー 中川 大輔

日本の産業競争力強化を使命とする産業技術総合研究所(産総研)グループは、 ストックマークと協業し、産学連携によるビジネスマッチングを加速する AI システム「Bibbidi」を開発しました。膨大な技術シーズと多様な市場ニーズを結びつけ、イノベーションを創出する本プラットフォームの開発にあたり、ストックマークと手を組むことになった背景から今後の展望を語っていただきました。

日本の産業イノベーションを後押しする産総研グループ

─はじめに、産総研グループの概要とミッションについて 教えていただけますか。

佐藤様:産総研は 140 年以上の歴史を持つ日本最大級の 公的研究機関です。「社会課題解決」と「産業競争力強化」 をミッションに掲げ、エネルギー・環境から情報・人間工学、 生命工学、材料・化学など広範な 7 領域で研究開発を行っています。その研究成果の社会実装を加速するため、2023年に産総研が 100% 出資する子会社として AIST Solutions (AISol)を設立しました。ここでは技術移転コンサルティングや、これまで産総研にはなかったマーケティング機能を担い、企業との連携を強化しています。

宮下様: AIST Solutions は、研究機関が持つ有望な技術 を企業がより活用しやすくすることを目指しています。具体的には、分野横断的なテーマでのマッチング支援、ビジ ネスの視点を取り入れたテーマのレビュー、そして連携手続 きの迅速化などを通じて、オープンイノベーションを効果的 に支援する体制を整えています。


宮下様


一筋縄ではいかないシーズとニーズのマッチング

今回のBibbidi 開発プロジェクトは、どのような背景から始まったのでしょうか。

宮下様:産総研グループには膨大な技術シーズ、つまり研究成果が蓄積されていますが、それを企業の具体的な事業アイデアやニーズと効果的に結びつけることには、従来から課題がありました。技術シーズを「どこで、どう活かすか」という用途探索は容易ではなく、逆に企業側が「実現したいこと」に対して、産総研内のどの技術が応用可能かを見つけ出すことも、特に我々のような大規模な研究機関では大きなハードルとなっており、人手によるマッチングにはどうしても限界があります。

特に、複数の技術分野をまたぐような横断的な検討や、近年ますます複雑化するビジネス課題に対応していく上では、 個人の知見頼みではない新たなアプローチが必要だと感じていました。

この、いわば「シーズとニーズのマッチング」における課題を解決し、産学連携をより効率的かつ高度なものにするため、産総研グループが持つ技術情報や専門知見と、ストックマークの AI技術を組み合わせた新しいシステム開発プロジェクトを発足させるに至りました。


産総研グループが期待を寄せた、ストックマークの生成AI技術

その課題に対し、ストックマークの技術に期待された点 は何だったのでしょうか。


門井様

門井様:今回多数の厳しい基準を設けてパートナーの公募 を実施いたしました。まず、自然言語処理をはじめとする生成AI分野における先端技術と、それを開発できる優秀なエンジニアが多数在籍している点。次に、単なる開発委託先としてではなく、プロジェクトに主体的に参画し、共にゴー ルを目指すパートナーとしての姿勢。ストックマークはそれらの要素を備えており、変化の激しい AI業界において、アジャイルな開発スタイルで迅速に対応できる能力はパートナーとして不可欠です。これらを高く評価しました。

加えて、産総研のAI橋渡しクラウド(ABCI)における計算 資源提供プログラムや、経済産業省の GENIAC プロジェク トでの採択実績、さらに AIST Solutions がビジネスモデル等を評価した上での「AISolスタートアップ」認定など、 オープンな形で活動が公表されていたことで、内外の信頼 があったことも大きいです。

中川: 産総研様が保有する膨大な量の技術データを活用し、 そして各分野のトップレベルの研究者の方々に納得いただけるような、質の高いマッチングシステムを構築する必要性を 強く認識していました。

ストックマークでは、Anews(※1)や SAT(※2)はじ めとするAIサービスの開発過程で培ってきた最先端の生成AI 技術があります。例えば、①ハルシネーションを大幅抑制し、厳密さが要求されるビジネスシーンでも信頼可能 な LLM と LLM 活用技術、②図や表、グラフなどの概を AI が理解し、検索や生成に用いることのできるデータ構造 化技術、そして③情報の関連性を定義する形でデータを構造化し、技術情報を効率的に LLM が検索することで精度の高い回答が可能になるナレッジグラフです。

これらを組み 合わせ、さらにそこに産総研グループ様の技術・事業知見 を加えることで、産総研の技術情報と世の中のニーズを精 度高くマッチングし回答させるシステムを開発できると考えました。


信頼性の高いストックマークのAIだからこそ、開発が実現した「Bibbidi」とは?

そうして開発された「Bibbidi」とは、具体的にどのよう なシステムなのでしょうか。

中川:Bibbidi は、産総研グループが保有する技術情報デー タベースと、ストックマークが開発した生成 AI・LLM(大規模言語モデル)を組み合わせたAIプラットフォームです。 企業の事業アイデア(ニーズ)と産総研の技術シーズをマッ チングしたり、逆に技術シーズから新たな用途を探索したりといった活動を支援します。

主な機能として、「企業やテーマから課題を発掘し、関連する産総研技術を特定する」、「産総研の特定技術から、応用可能なビジネスアイデアを生成する」、「ユーザーが入力した自由な技術コンセプトに基づき、関連技術やアイデアを生 成する」、そして「特定の技術分野に関するトレンドや全体像を、ロジックツリーなどの形式で分かりやすく可視化する」 という 4 つの探索ルートを備えています。

今回の開発に繋がったストックマークの生成 AI の技術的な ポイントは主に3つあります。第一に、ユーザーの意図を正確に理解し、質の高い回答を生成するLLMの活用。第二に、ビジネスの現場で使われる言葉と、研究開発における技術的な専門用語を適切に紐付け、解釈・類推する技術。 第三に、産総研内部の技術データや外部の市場情報などを 効率的に構造化し、AI が必要な情報を正確かつ迅速に抽出 できるようにするデータベース技術、特に我々が強みとするナレッジグラフと呼ばれる効率的に情報を取得できる仕組み の活用です。

Bibbidiを活用することで、従来は担当者の知識や経験に依存しがちだったシーズ・ニーズのマッチング検討において、 AIが妥当性のある、網羅的かつ多角的なマッチング結果を提供し、検討における抜け漏れを減らすことができます。これにより、効率的かつ効果的な検討の「叩き台」を得られ る点が大きなメリットだと考えています。


中川

佐藤様:産総研側としても、Bibbidi の使いやすいユーザー インターフェースや、技術シーズと企業ニーズの双方を網羅的に把握できる能力を評価しています。特に、質問に合致する直接的な回答だけでなく、その周辺にある関連技術まで含めて提案してくれる点は、予期せぬ組み合わせによるイノベーションを生み出す上で非常に重要だと感じています。

宮下様:最終的には、専門知識がない方でも、自身の課題を投げかけるだけで最適な技術シーズを引き出せるような、 まさに「ドラえもんの四次元ポケット」のような存在を目指したいと考えています。

実際に使ってみて、ストックマークのAI技術、特に回答の明確さとハルシネーションがよく抑制されている点も高く評価しています。汎用的な生成AIツールでは専門的な分野では技術の細かい点では嘘や回答がうまくできないことがよくある中で、ストックマークのAIは信頼性の高い情報が得られるため、具体的な提案を作成する上で非常に有効でした。


「Bibbidi」が切り拓くオープンイノベーション

ーBibbidi の今後の展開について、展望をお聞かせください。


佐藤様

佐藤様:産総研の研究者にとっては、Bibbidi は新たな研究の種を見つけるための強力なツールになり得ると期待して います。自身の専門分野と、これまで接点のなかった異分野の技術とをBibbidi上で組み合わせることで、新しい研究シーズの創出につながる可能性があります。また、まだ形になっていない潜在的な研究シーズを探索し、カタログ化していくといった活用も考えられるでしょう。

宮下様:AIST Solutionsとしては、Bibbidiを技術起点の新規事業開発に取り組む多くの企業、例えば R&D部門や新規事業開発部門の方々に広く活用していただきたいと考えています。オープンイノベーションが不可欠となる中で、 技術探索のハードルを下げ、日本の産業界から新たなプロ ダクトやサービスが生まれる一助となることを目指していきます。


確かな手応えを胸に、ストックマークと次のステージへ

―最後に、パートナーであるストックマークに対して、今後期待することを教えてください。

門井様:今回の開発プロセスでは、生成AIという新しい技 術を用いたシステム開発特有の難しさ、特に仕様が発散しやすいという課題がありました。その中で、ストックマークは技術的な専門知識に基づき、プロジェクトの目的やスコープを常に明確にしながら、我々の意図を汲み取り、双方にとって最善の形へと粘り強く導いてくれた点を高く評価しています。

中川:特に、要件定義が難しい生成 AI 開発においては、 表面的な機能要求だけでなく、「本来何を達成したいのか」 という目的起点で対話を重ね、言語化を徹底し、プロジェ クトのコアとなる部分を見極めていくコミュニケーションが 極めて重要であったと改めて感じています。産総研グループ の知見とストックマークの AI 知見を組み合わせた高度な取り組みを共同で進めながら、Bibbidiを汎用 LLMでは辿り着けない領域によりアップデートしていきたいです。

門井様:今後ストックマークには、引き続き生成 AI分野のフロンティアを走り続け、多様なユースケースを通じて得られる知見を蓄積・活用し、AIを初めて使う初心者から高度な活用を目指す熟練者まで、様々なユーザーが抱える課題に対応できる、より洗練されたシステムやサービスを提供していくことを期待しています。

そうしたストックマークの継続的な進化が、我々産総研グ ループとの連携をさらに深化させ、将来的には、今回の Bibbidi開発から派生するような新たなビジネスや、より大 きな産学連携の発展へとつながっていくことを強く期待しています。

※記事内容および、ご所属等は取材当時のものです。



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