MENU
導入事例

長年培ってきた技術ナレッジを、AIで誰でも使える資産に。ジェイテクトが挑むベテランの知見継承

株式会社ジェイテクト

 【プロジェクトテーマ】
生成AIによる企業内暗黙知の形式知化と、データ構造化技術の研究開発および活用基盤の構築

【取材にご協力いただいた方々】
  • 株式会社ジェイテクト
    • データアナリティクス研究部 AI研究室 室長 大久保 勇佐 様
    • データアナリティクス研究部 AI研究室 上席プロフェッショナル 新谷 元紀 様
    • データアナリティクス研究部 AI研究室 プロジェクトマネージャー 中瀬 晶詳 様

01. 本プロジェクトのテーマ

開発設計のナレッジを共有する、部門横断でのデータ活用基盤の構築

ジェイテクトが取り組むのは、開発設計領域における共通データ活用基盤の構築と、業務の中で自然に「暗黙知」が形式知として抽出される仕組みづくりです。

本プロジェクトでは、製造現場特有の複雑な技術データをAIで読み取り可能な形に構造化し、 部門の壁を越えて過去の知見を自在に引き出せる、横断的なデータ活用基盤の構築を進めます。

さらに、ベテラン技術者の思考プロセスといった「現場の暗黙知」そのものが、日常業務の中で自然に蓄積され、組織の資産として活用されていくフィードバックループの確立を目指します。

これにより、事業部の垣根を越えて設計の因果関係や過去の知見を全社で共有できる基盤に集約し、開発リードタイムの短縮と品質向上を同時に実現する「エンジニアリングチェーンの変革」に挑みます。

02. 課題とその背景

過去データの活用を阻む、3つの壁

現在、ジェイテクトの開発現場では文書のデジタル化は進んでいるものの、技術的な課題に直面した際には、依然としてベテラン技術者の記憶に頼ったり、過去のデータを人づてに探したりせざるを得ない状況が残っています。こうした開発設計シーンでの過去データの検索や活用を困難にしている背景には、大きく3つの構造的課題が存在しています。

設計文書の複雑性とデータ形式の多様性

特に設計開発上、品質管理の核となる「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode:設計の変更点や変化点に着目した品質トラブルの未然防止手法) 」や「FTA(Fault Tree Analysis:トラブルの原因を論理的にツリー状に分解・評価する手法)」は、セル結合や複雑なレイアウトが多用された特殊なフォーマットであり、一般的なAIでは記載内容の「意味」を正確に読み解くことができません。

加えて、現場では写真や手書きといった、AIで扱うには難解な状態の情報も多く存在します。組織内でフォーマットやデータ形式が多岐にわたって存在していることが、知見の探索をいっそう困難にさせています。

過去の知見同士を結びつける仕組みの不足

過去の膨大な知見が蓄積されてはいても、現状ではそれらが「点」の情報として孤立しており、因果関係に基づいた検索ができません。そのため、実務者が即座に活用できる知識として体系化されていない状態にあります。

各事業部ごとに異なる「独自」の技術用語やフォーマット

複数の事業ドメインを持っているからこそ、各事業には「独自の技術用語」が存在しており、他事業部からは検索が難しい状況があります。さらに、長年管理されてきた品質管理フォーマットが部署や時代によって異なっているケースがあり、同一組織内であっても、背景を把握していなければ、探したい情報を発見できないという課題を生みます。

その結果、本来であればシナジーを生み出せるはずの組織の知見にたどり着けず、情報を探索することに多大な工数を要しています。

こうした状況は、過去と同じ失敗の再発や、若手によるゼロからの再検討といった「手戻り」による時間的コストを増大させています。熟練技術者の退職が本格化する中、数十年にわたり現場で磨き上げられてきた知恵が組織から失われるリスクは、避けて通れない経営課題となっています。

03. 解決策と目指す姿

実務で使えるデータ活用基盤と、暗黙知の形式知化を目指して

今回のプロジェクトでは、この難局を打破するために、以下のアプローチで変革を加速させます。

VLMを用い、複雑なデータを構造化

ストックマークの図表読解に強いVLM(視覚言語モデル)技術を活用し、従来は解析不能だった複雑な表形式の技術文書から「設計変更の意図」や「故障の因果関係」を抽出します。これにより、DRBFMなどの複雑なデータの中から、必要な技術的文脈を精緻に検索できる環境を整備します。

ナレッジグラフによる知見の体系化

これまでの知見を、スムーズに検索しやすくするために、用語ごとの関連性や技術文書間のつながりを可視化する「ナレッジグラフ」で整理します。これまで「点」で存在していた情報同士を因果関係に基づき結合することで、部門や文書の壁を越えた、真に実務に即した横断検索を実現します。

業務における「暗黙知」の自動抽出

開発設計部門にある「暗黙知」をデータとして蓄積し、形式知化していくには、追加の作業を増やさず、普段の仕事の中で自然に記録される仕組みを作れるかが重要です。

そのため、たとえばエンジニア同士の相談や設計の検討の中で生まれる「重要な判断」や「問題の解決方法を含むやり取り」を自動で記録し、それをAIで活用できるようにするなど、日常業務の延長で暗黙知を取り出せる仕組みを検討・設計していきます。

04. 担当者様のコメント

「当社最大の強みは、自動車部品、ベアリング、工作機械という三つの事業が相互に作用し合うところです。自社製品を自社の機械で製造し、それを自社のベアリングで支えるといった、多岐にわたる自社技術でサプライチェーンを支える構造は、世界でも類を見ない稀有なものです。

だからこそ、各事業部が長年蓄積してきた膨大な技術ナレッジを有機的に連携させることができれば、品質改善や新製品開発のスピードは飛躍的に加速すると考えています。

今回我々は、このプロジェクトで得られる知見を、自社だけではなく、トヨタグループ、さらには日本の製造業全体の競争力向上へと繋げていくことを目指しています。まずは我々が、この困難な変革の先駆者となり、この一歩から日本のものづくりの未来をアップデートしていく。そんな想いと期待をもって、このプロジェクトに取り組んでいます」

※記事内容および、ご所属等は取材当時のものです。

本件へのお問い合わせはこちら

この記事と類似の事例を見る

PAGE TOP