株式会社LIXIL
【プロジェクトテーマ】
オンラインショールームの接客映像と製品構成仕様の統合学習による、複雑なリフォーム提案を完遂させるデータ基盤の構築
- 株式会社LIXIL
- CX部門 データサイエンス室 室長 片所 強 様
- Japan SoE DevOps. Digital Scrum Expert CPO 出井 彰記 様
01. 本プロジェクトのテーマ:
接客映像×製品仕様のAI融合による、高度なリフォーム提案の実現
LIXILが取り組むのは、日常の中で「なんとなく不便に感じている」「リフォームするべきだと感じているものの、具体的にどうすればいいか分からない」という、検討の初期段階にあるお客様を導くAIコミュニケーションの構築です。 リフォームは人生で一度か二度あるかの機会しかなく、お客様にとっては具体的に何をどう検討すればいいのかイメージが湧きにくく、プロに相談するのも敷居が高いという性質があります。本プロジェクトでは、AIと対話しながら、お客様がなんとなく求めている理想を具現化し、安心して次の一歩を踏み出せるようなナビゲーションを目指します。
本プロジェクトによって、お客様がある程度のイメージを持った状態でショールームへ来場できるようになります。結果として、ショールームのコーディネーターが「一から商品説明をする」「手作業で事前プランを作る」といった定型業務を大幅に削減し、お客様の不安に寄り添って最後の意思決定を後押しする本来の提供価値に100%注力できる、三方よしで、全員がWin-Winとなる世界線を描いています。
02. いまの課題、その背景:
届きにくいエンドユーザーの声と、システム・商材のサイロ化という構造的限界
これまでもLIXILでは、お客様向けにショールームの提案ツールから発展したプラン検索・シミュレーションツールを展開してきました。しかし、「知識がないと検索すらできない」という壁があり、初期検討から送客への流れがスムーズに繋がらない課題がありました。その背景には、建材・住設業界特有の構造的な難しさがあります。
メーカーであるLIXILは、基本的には流通店(販売店)に商品を卸し、その先の工務店(コントラクター)が施工してお施主様(エンドユーザー)に届けるという伝統的な商流の中にあります。そのため、メーカーがお客様と直接コミュニケーションを取り、主体的にリフォームの動機を喚起するアプローチが極めて困難でした。
さらに、社内的な課題として「システムのサイロ化」が挙げられます。過去には、お客様の行動を可視化するために様々な個別サイトの立ち上げやデータベンダーとの連携を試みました。しかし、それぞれのシステムが独立していたため、「異なる場所で同じことを何度も聞かれる」といったストレスをお客様に強いる状態が一部に残っていました。これらをいかに統合し、初期検討からショールームにおける接客、最終的な発注システムまでをシームレスに繋げられるかが、長年の構造的なボトルネックとなっていました。

03. 解決策と目指す姿:
AIが基本対話を担い、人間は高度な提案へ。コーディネーターの強みを最大化する「分業リレーモデル」
現場のコーディネーターやお客様がすぐに効果を実感できるよう、以下の3つのポイントに沿ってアジャイル(段階的)に仕組みづくりを進めます。
対話ログから完成図生成までを一気通貫で繋ぐパイプライン
お客様との最初の「対話ログ」からLLMが要件を抽出し、ベクトル検索を経て最適なプランを自動提示します。そのまま既存の3Dシミュレーターへとシームレスに連動させることで、その場でリフォーム後の完成予想図をプレビューできる仕組みを構築。確認の手間を徹底的に削減し、スムーズな提案プロセスを実現します。
顧客の「主観表現」を正確な仕様コードへと変換
「明るい木目で、なんとなく赤っぽい」といった、お客様の抽象的なイメージを、AIが3つのステップ(LLM意味抽出、タグDB検索、共起頻度等によるスコアリング)を経て、システムが認識できる正確な仕様へと変換。LIXILの既存システム(コンフィグレーターや3Dビューア)と裏側ですぐに連動させることで、言語化が難しい理想のデザインを即座に画面へ可視化します。
AIとコーディネーターの強みを活かした「分業リレーモデル」
接客の序盤10分(家族構成や予算、リフォーム範囲など基本質問)は、AIによるディシジョンツリー(分岐型質問)で代替。これにより、聞き忘れやメモ漏れを防ぎ、会話履歴を構造化して完璧に記憶・保持します。その分の余白を活用し、人間のコーディネーターは中盤以降の信頼関係構築や専門的な提案、そして最後にお客様の不安に寄り添って意思決定を後押しする「人間にしかできない高度なクロージング業務」に100%集中できる環境を整備します。
04. 担当者様のコメント:
ショールームを「背中を押す場所」へ。AIとの協調で、提案に集中できる環境を
「私たちが今回のプロジェクトに最も期待しているのは、ショールームの現場業務を大きく変え、コーディネーターが本来持っている『人にしかできない強み』を最大限に発揮できる環境を整えることです。 これまでは、商品説明や事前のプラン作成といった定型的な作業に追われ、接客時に『お客様の不安をじっくりと聞き、納得していただくための時間』を十分に確保できないという課題がありました。」
「 今回のプロジェクトによって、お客様の来館前に『言語化されない理想』がナビゲートされ、そのデータがシームレスにショールームへ引き継がれるようになれば、現場のあり方は劇的に変わります。コーディネーターが一からの商品説明や事務作業から解放され、最初からお客様の意思決定を後押しする高度なコミュニケーションに100%注力できるようになります。定型業務はAIに任せ、人間は『本当に考えるべき価値ある仕事』に向き合う。それによって、お客様にとってはリフォームの検討がスムーズで楽しいものになり、コーディネーターにとってはよりクリエイティブな仕事に集中できる。そして会社としても確かな価値をお届けできるという、関わる全員がWin-Winになる理想の世界を、このプロジェクトを通じて着実に形にしていきたいです。」

※記事内容および、ご所属等は取材当時のものです。