ライオン株式会社
【プロジェクトテーマ】
生活者調査データの構造化と「AIコンシューマー・ツイン」との共創がもたらす、次世代マーケティング基盤の構築
- ライオン株式会社 マーケティングデザインセンター
- 大村 和顕 様
- 米谷 紘 様
01. プロジェクトでの取り組みテーマ内容
生活者の深層心理を動的に再現する「AIコンシューマー・ツイン」の構築
ライオンが挑むのは、長年蓄積されてきた膨大な生活者調査データの構造化と、それらを「意思決定を加速する動的資産」へと変換する次世代マーケティング基盤の確立です。
本プロジェクトでは、各部門に存在・暗黙知化していた定性・定量調査データを統合・構造化。部門の壁を超え、組織全体がいつでも「生活者の本音」に即座にアクセスし、新しい着想へと昇華できるマーケティング基盤を構築します。
最大の変革ポイントは、生活者の価値観や意思決定の軸をデジタル上で動的に再現する「AIコンシューマー・ツイン(AI生活者)」の構築です。AIを生活者の「思考の分身」として機能させ、バーチャル空間での即時インタビューを可能にすることで、従来数ヶ月を要した検証サイクルを最短0.5日へと短縮し、インサイト抽出からコンセプト生成までの機敏性を圧倒的に高めます。
併せて、過去の成否因果を学習し、企画案に対して客観的なリスクやマーケターの盲点を提示する「戦略バリデーション・エージェント」の実証も実施。データと直感を融合させ、変化の激しい市場環境に即応できる、マーケティング・エコシステムの確立を目指します。
02. 課題とその背景
激変する市場と「不可逆な検証プロセス」が生むタイムラグの限界
日用消費財のマーケティングにおいて最大のボトルネックとなっているのが、「市場変化の圧倒的スピード」と「仮説検証サイクル」の乖離です。従来のアプローチ方法では、アイデア出しから調査、上市までに時間を要し製品を世に届ける頃には生活者のインサイト(本音)が既に変容してしまうというタイムラグが発生します。
この根因は、従来リサーチ手法が抱える「不可逆性」にあります。一度調査が走り出すと途中で軌道修正が効かず、多大な時間とコストを投じても「やり直しのきかない一発勝負」とならざるを得ず、柔軟な意思決定の枷となっていました。
さらに、既存のカテゴリーでは捉えきれないほど消費者の価値観が複雑化する現代において、表面的な理解だけでなく、言語化されていない「無意識の本音」をリアルタイムに引き出し、タイムリーに仮説をぶつけて深掘りできる、全く新しい顧客理解のアプローチが急務となっていました。
3. 解決策と目指す姿
データを「対話可能な知見」へ。AIとの壁打ちで“思考を拡張する”プロセスへの転換
今回のプロジェクトでは、このボトルネックを打破し、顧客理解のパラダイムシフトを起こすため、以下のアプローチで変革を加速させます。
全社横断の「顧客理解基盤」の構築
これまで部門ごとに分断・孤立して管理されていた膨大な調査データを構造化し、全社で共有可能な「対話できる知見」へと変換。過去のナレッジを誰もが瞬時に参照できる基盤を構築し、意思決定の精度を高めます。
「AI生活者」への連続的な問いかけによる、検証の「量と質」の最大化
独自データをもとに生活者の価値観や内面までをデジタル上に再現した「AI生活者」を構築。従来の不可逆な調査をアップデートし、マーケターが「この切り口ではどうか?」と次々に新たな仮説をぶつけ続けることで、圧倒的なスピードで検証の「量」をこなし、インサイトの「質」を極限まで高めるフローへと転換します。
人間の盲点を突く「思考のパートナー(AI)」による意思決定の支援
過去の無数の仮説と検証結果を学習したAIが、これから世に問う新たな価値提案(コンセプト)に対して、忖度のない反証やマーケター自身が気づきにくいリスクを提示します。AIを単なる「正解を提示するシステム」にするのではなく、過去のナレッジに基づく鋭い「問い」を投げる壁打ち相手として活用することで、人間の直感や身体感覚による深い意思決定を後押しします。
後戻りできない直線的な検証プロセスから、AIからの反証をフックに人間の思考枠を広げ、仮説の精度を圧倒的スピードで高め続けるマーケティングプロセスへ進化させることで、生活者へ製品を届けるスピードと、製品価値の最大化の両立を目指します。
04. 担当者様のコメント:
これまでの積み重ねを次へつなぐ。
「これまで私たちは、生活者の見えないニーズを探求し、日々の暮らしをより良くする新たな価値提案を重ねてきました。今、長年積み上げてきた独自のデータ資産にAIという異質な視点を融合させることで、私たちのマーケティングプロセスを次の次元へと飛躍させるチャンスを迎えています。
私たちが挑むのは、ライオンの知見から「生活者の無意識の本音」や市場の空気を生々しく語る「AI生活者」の構築という新しい挑戦です。これが実現すれば、時間や物理的な制約で「一度きり」で終わらざるを得なかったこれまでの仮説検証は、いつでも何度でも深掘りできる「連続的な対話」へと進化し、人間の直感とAIの力を掛け合わせて、圧倒的なスピードと確度で次なる価値提案を生み出せるようになります。
AIは人間の代わりになるものではなく、私たちの共感力やクリエイティビティを極限まで引き出してくれる思考のパートナーです。テクノロジーを恐れず、AIと共に一歩を踏み出すことで、ライオンをよりしなやかで変化に強い組織へと進化させ、既存の枠組みを超えた非連続な価値創造を持続し、私たちのパーパスである『より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)』の実現へと繋げていけると確信しています」

※記事内容および、ご所属等は取材当時のものです。